2026/03/27
目次
初めての路面店やテナントでの出店を計画する際、大きな壁となるのが内装費用です。
理想のイメージを追求したい一方で、限られた予算内でどこまでこだわりを実現できるか、不安を感じているオーナー様も少なくありません。
特にマツエクサロンの場合、狭小物件であっても保健所の規定をクリアしなければならず、さらに「お客様が長時間仰向けになる」という特殊な環境への配慮も求められます。
そこで本記事では、内装会社としての視点から、無駄なコストを削ぎ落としつつ、サロンの質を落とさないための現実的な設計ポイントをお伝えします。
費用を抑えるための近道は、既存の資産をいかに有効活用するか、そして予算の投下先に明確な優先順位をつけることにあります。
美容室やエステサロンの居抜き物件を活用することで、初期費用を大幅に圧縮できる可能性があります。
特に「給排水設備」や「手洗い器」、「床材」などがそのまま流用できれば、基礎工事にかかるコストを数百万円単位で抑えられるケースもあります。
マツエクサロンの保健所登録に必須となる設備が既に整っている物件を選ぶことは、非常に有効な戦略です。
限られた予算の中で価値を最大化するには、優先順位の明確化が不可欠です。
・予算をかけるべき「投資ポイント」
お客様が直接触れる場所や、滞在中の視界に常に入る部分は、空間の質を左右します。
什器(リクライニングチェアなど): 長時間過ごす場所の快適性は、顧客満足度に直結します。
受付・エントランス: 店舗の「顔」であり、第一印象を決定づける重要な要素です。
照明プラン: 空間の陰影や雰囲気をコントロールし、内装の仕上がりを一段引き上げます。
・コストを抑える「引き算ポイント」
機能性を損なわずに、シンプルにまとめることで大幅なコストダウンが可能です。
壁面: 華美な装飾を控え、塗装やクロスでシンプルに仕上げることで施工費を抑えます。
間仕切り: 壁を立てるのではなく、造作を簡略化したり、家具やパーテーションを活用します。
天井: 既設を活かしたスケルトン仕様や、シンプルな仕上げに留めることでコストを削減できます。
顧客満足度に直結する部分に予算を集中させ、それ以外はシンプルにまとめるメリハリが、賢い店舗づくりのポイントです。
コストを抑えると言っても、保健所の検査をクリアできなければ営業を開始することができません。
後から修正が効かない「絶対条件」を、設計の段階で確実に押さえておく必要があります。
マツエクサロンの開設には、作業面積の規定(一般的に13平米以上など自治体により異なる)や、床・壁の素材が清掃しやすい「不浸透性材料」であること、適切な洗髪設備や消毒設備の配置などが求められます。
これらの法的要件を内装工法の段階で正しく組み込んでおくことが、余計な改修費用を発生させないための最大の防衛策となります。
物理的な広さや高価な素材に頼らなくても、設計の工夫次第で空間に「贅沢なゆとり」を感じさせることは可能です。
施術中、お客様は常に天井を見上げている状態にあります。
そのため、直接的な光が目に入らないよう、眩しさを抑えた間接照明をメインに配置することが重要です。
壁面をやさしく照らす光の演出は、空間に奥行きを感じさせ、限られた広さを実際以上にゆったりと見せる効果があります。
完全個室をつくるスペースや予算が限られている場合でも、カーテンやパーテーションを活用することで、質の高いプライベート感を演出できます。
透過性のある素材や高さを工夫することで、圧迫感を抑えながらも「自分だけの空間」という安心感を顧客に与え、空間全体を広く見せることが可能です。
天井の圧迫感を軽減するためには、天井を開放して「スケルトン天井」にする、あるいは膨張色である明るい色使いを採用するといった手法が有効です。
視線を上へ逃がす設計は、狭小物件特有の閉塞感を解消し、開放的な印象を強めます。
内装は美しさだけでなく、現場で働くスタッフの動きを妨げない機能性が求められます。
日々の作業効率を高める設計は、長期的な運営コストの削減にも繋がるため、重視すべきポイントと心得ましょう。
限られたスペースの中で、スタッフの可動域を確保しつつ、お客様が着替えや移動をスムーズに行える通路幅を確保するには、ミリ単位の配置計画が必要です。
ワゴンや商材置き場を作業動線に合わせて機能的に配置することで、無駄な動きを削ぎ落とし、施術に集中できる環境を整えます。
マツエクサロン特有の設備配慮として、影ができにくい手元用ライトの電源位置(コンセント配置)を事前に確定させておくことが重要です。
また、グルーの乾燥速度に影響を与えるエアコンの風についても、顧客に直接当たらないよう吹き出し口の調整やルーバーの設置を行い、施術の精度を保つための空気環境を設計します。
当社が手掛けた、コストとデザインのバランスを追求したマツエクサロンの事例をご紹介します。

シンプルでありながら、落ち着いた雰囲気が漂うアイラッシュサロン。
ゲストが来店した際に「居心地が良い」と感じる空間を目指し、建物のコンクリート構造と相乗効果を生む壁の塗装色、そして緻密な照明プランに重きを置いて計画しました。
ミニマルなインテリアは洗練を感じさせる一方で、寂しく冷たい印象になりがちです。
そこを補うため、コンクリートの質感に馴染む塗装色を選定し、一部に木目を採り入れることで、温かみと将来のカスタマイズ性を残した「余白」のある空間に仕上げました。

施術エリアはゆとりのある配置を行い、あえて壁をつくらないオープンスペースを選択。
プライバシーが必要な場面では可動式パーテーションを用いるなど、その時々の状況に応じて空間を使い分けられるフレキシブルな構造を採用しています。
初めての店舗づくりにおいて、最も気になるのが具体的な費用の目安です。
物件の状態によって、必要な予算は大きく変動します。
一般的な相場としては、坪単価40万円〜60万円程度が目安となります。
例えば、10坪〜15坪程度の標準的な広さのマツエクサロンであれば、内装工事費の総額で500万円〜800万円前後がボリュームゾーンです。
ここに、セット椅子や什器などの備品代(100万円〜200万円程度)が加わるため、トータルでの初期投資をイメージしておく必要があります。
もちろん、居抜き物件を活用し、既存の壁や床、電気設備をそのまま活かすことができれば、坪単価30万円前後、総額で300万円〜400万円程度までコストを抑えられるケースもあります。
まずは「スケルトンからのフルリノベーション」か「居抜きを活かした部分改装」かを検討し、予算の優先順位を整理することから始めましょう。
こちらでは、限られた予算で満足度の高い店舗をつくり上げるためのパートナー選びの基準をお伝えします。
保健所の解釈を熟知している業者を選ぶことは、開業を成功させるための必須条件です。
図面作成の段階から事前相談までスムーズにリードしてくれる経験豊富なパートナーがいれば、不備による工期の遅れや追加費用のリスクを最小限に抑えられます。
単に言われた通りにつくるのではなく、鏡の配置や照明の奥行き感、壁面のアクセントなどを柔軟に提案できるかを見極めることが重要です。
オーナー様の要望を汲み取りつつ、コストを抑えながらもグレード感のある仕上がりを提示できる業者が、最良のパートナーとなります。
マツエクサロンの内装において、費用を抑えることと、お客様に満足いただける空間をつくることは両立可能です。
居抜き物件の賢い活用、予算の投下先の見極め、照明や動線による設計の工夫など、これらを積み重ねることで、初めての本格的な店舗づくりであっても、低コストで「高見え」する理想のサロンを実現できます。
この記事の監修者 中原優介

YUSUKE NAKAHARA中原優介
株式会社nero 代表。
福岡・東京エリアを中心に店舗デザイン・空間設計のプロフェッショナルとして
美容院や飲食店、オフィスなど全国の多様な空間をプロデュース。
洗練されたデザインと実用性を兼ね備えた「価値ある空間」を追求し、
ジャンルを問わず幅広い分野でクリエイティブな提案を行っている。