2026/06/04
この記事の監修者

中原 優介
飲食店の開業において、理想の空間づくりと現実的な予算管理の両立は、多くのオーナー様が直面する大きな課題の一つです。
コンセプトに沿った魅力的な店舗を実現するためには、内装費用の構造を正しく理解し、どの工程にどれだけのコストがかかるのかを把握しておく必要があります。
物件選定や設計の段階で正確な知識を持つことは、予期せぬ予算オーバーを防ぐだけでなく、限られたリソースを最大限に活用した価値ある空間づくりへと繋がります。
本記事では、飲食店の内装費用の相場や内訳、費用を左右する要因、コストを抑えるための考え方について解説します。
これから開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
店舗デザイン・設計施工の株式会社nero
neroは、店舗・オフィス・住宅など多様な空間を対象に、企画設計から施工、ブランディング、販促・Web・SNSまで一貫して手掛ける空間プロデュース会社です。ブランドの世界観を空間に反映し、集客や繁盛店づくりを支援。社名には「信念を持ち社会貢献する」という想いが込められています。
目次
飲食店の内装費用は、店舗規模や業態によって異なります。
まずは全体像を把握し、どのような考え方で予算を組むべきか整理することが重要です。
飲食店の内装費用を検討するにあたって、業界内で一般的に用いられる指標が「坪単価」です。
坪単価とは、物件の本体価格や総工事費用を店舗の坪数で割った数値であり、初期段階の予算シミュレーションにおいて欠かせない要素となります。
飲食店の場合、坪単価40万円〜80万円程度が標準的なボリュームゾーンとされています。
ただし、これはあくまで参考値です。
同じ坪数でも業態や設備内容によって単価は変動します。
例えば、排煙や給排水など特殊設備が必要な業態では、坪単価が上振れしやすい傾向があります。
坪単価のみで判断せず、必要設備まで含めて予算を考える必要があります。
内装費用という言葉が指す範囲は広く、単に装飾工事だけを意味するものではありません。
飲食店の場合は特に、顧客の目に触れる「内装仕上げ」に加えて、目に見えない箇所の「インフラ設備」、そして「厨房設備」の3つの要素が組み合わさって全体のコストを形成します。
これら3つの要素のなかで、飲食店ならではのポイントとなるのが「厨房関連のコスト比率」です。
ガス、水道、電気の容量増設やそれらに伴う配管工事は、住宅やオフィスの内装工事にはない大きな支出項目となります。
全体の予算をどのセクションにどれだけ配分するかという優先順位の策定が、のちの運営効率を左右します。
内装費用の全体像を把握した後は、その内訳を精査することが重要です。
各工事項目が全体に占める比率を知ることで、予算調整を行う際、どこを削り、どこに投資すべきかの判断基準が得られます。
内装工事は、床・壁・天井の仕上げ、カウンターの造作、客席の施工など、店舗の視覚的な印象を決定づける項目です。
内装工事費用は、全体費用の25%〜30%前後が一つの目安とされています。
例えば、20坪の店舗で総額800万円〜1,600万円のプロジェクトを想定した場合、内装工事費用は200万円〜480万円程度が標準的な範囲です。
ただし、特注の什器やデザイナーズ家具、高級感のある素材(無垢材やタイルなど)を多用する場合は、比率が30%〜50%(約240万円〜800万円)程度まで上昇することがあります。
内装工事費用は物件条件や業態によって変動するため、上述した目安は参考値として捉えることが重要です。
設備工事は、電気容量の増設、空調・換気ダクトの設置、給排水やガス配管の工事などを指します。
これらの工事は店舗運営の基盤となる部分であり、全体費用の30%〜40%前後という高い比率を占めるのが一般的です。
例えば、先ほどと同じく20坪の店舗で総額800万円〜1,600万円のプロジェクトを想定した場合、160万円〜480万円程度が基準となりますが、物件のインフラ状況によっては640万円程度まで上振れするケースもあります。
特に飲食店は、オフィスなどに比べて換気・排気設備への要求が厳しいため、ダクトの引き回しや消臭装置の有無が金額に直結します。
また、物件がスケルトン状態であるか、居抜きで既存設備が転用可能かによっても大きく変動する項目です。
厨房設備・機器は、コンロやシンク、冷蔵庫、製氷機、食器洗浄機などの導入を指し、それらにかかる費用は全体費用の20%〜30%前後が一つの目安と言われています。
金額に換算すると200万円〜800万円程度が一般的な範囲です。
厨房費用の変動要因は、主に「業態」と「機器のグレード」です。
例えば、焼肉店やラーメン店、本格的なオーブンを多用するベーカリーなどは必要な機器のスペックが高いため、費用が膨らみやすい傾向にあります。
また、すべての機器を新品で揃えるのか、中古品を織り交ぜて構成するのかによって、コストを調整することが可能です。
提供するメニューや調理方法の違いは、そのまま厨房設備の重装備化や内装仕上げに反映されます。
業態ごとにコストがかかりやすいポイントを理解しておくことで、自身の開業プランにおける予算の妥当性を検証することができます。
カフェやバーなどの軽飲食は、本格的な重調理を行わないため、厨房設備が簡易的で済む場合が多く、全体コストを抑えやすい傾向にあります。
排気ダクトや給排水の負荷が小さいため、設備工事費の比率が下がるのが一般的です。
その一方で、カフェ業態は「空間の雰囲気」そのものが商品価値の一部となるため、内装デザインや家具、照明への投資比率が高くなることが多い傾向にあります。
設備を抑えつつ、顧客満足度に直結する内装の質感に予算を集中させることが、この業態の定石と言えます。
居酒屋や一般的なレストランは、厨房機能と客席のホスピタリティの両方に一定の投資が必要な「バランス型」の費用構成となります。
多種多様なメニューを提供するため、厨房内にはガスレンジ、フライヤー、冷蔵設備などが一通り揃っている必要があります。
客席部分においては、ターゲットとする客層に合わせて、落ち着きのある個室の造作や、スタッフのサービス効率を高めるための動線設計が重要視されます。
席数と回転率を考慮したレイアウト設計が、投資に対するリターンを最大化させる鍵となります。
焼肉店やラーメン店などの専門店は、特定の調理に特化した強力な設備が必要となるため、坪単価が上昇しやすい業態です。
例えば、焼肉店であればテーブルごとの排煙設備、ラーメン店であれば大量の蒸気を逃がす換気設備と高火力のガス容量が不可欠です。
これらの設備は、単に機器を設置するだけでなく、防臭・防音対策など、ビルや近隣環境への配慮も含めた特殊な工事を伴います。
内装仕上げ以上に「機能」としてのインフラに多額の予算が割かれるため、坪単価が上振れしやすい特徴があります。
同じ坪数の店舗であるにもかかわらず見積額が異なる理由には、複数の外部要因が関係しています。
コンクリートの打ちっぱなしから始める「スケルトン物件」は、レイアウトの自由度が極めて高い反面、インフラを一から構築するためコストは最大化します。
対して、前店舗の設備が残っている「居抜き物件」は、厨房設備や内装の一部を流用することで、初期費用を抑えることが可能です。
ただし、既存設備が現在の法令や衛生基準を満たしているか、老朽化による追加工事が必要ないかという点には細心の注意を払う必要があります。
本物の木材や石材、タイル、職人の手仕事が必要な左官壁などは、材料費と工賃の両面でコストを押し上げます。
一方で、最新の建材には本物の質感に近い合成素材やメラミン化粧板なども存在し、それらを効果的に用いることで、見た目の美しさを保ちつつコストを抑制することも可能です。
シンプルな設計に徹し、照明の当て方で高級感を演出する手法も、コストコントロールの有効な手段となります。
路面店に比べ高層ビルの上階や地下店舗などは、資材の搬入・搬出に時間と人手がかかるため、運搬費や人件費が加算されることがあります。
また、工事可能な時間帯の制約(夜間工事の指定など)やビル側の指定業者によるB工事の有無なども、費用が上振れする要因となります。
物件を契約する前に、管理規約や工事の制限事項を詳細に確認しておくことが、予期せぬ出費を防ぐことに繋がります。
限られた予算の中で理想の店舗を実現するためには、すべての要望を網羅するのではなく、戦略的な選択と集中が必要です。
費用対効果を高めるためには、顧客体験に直接影響を与える「見せ場」と、それ以外の「抑える部分」を明確に区別することが肝要です。
例えば、ファサード(入口)やメインカウンター、トイレなどの顧客が直接触れる部分には質の高い素材を使用し、投資を集中させます。
一方で、スタッフのみが入るバックヤードや顧客の視界に入りにくい天井、足元などの部分は、シンプルな仕上げや安価な素材を選択することで、全体の予算を調整できます。
このメリハリをつけた設計が、洗練された印象とコストカットを両立させます。
居抜き物件を選択した場合、既存の厨房設備や配管ルートを最大限に活かすことが、最も直接的なコスト削減に繋がります。
ただし、既存設備を活用する際は動作確認だけでなく、現在の保健所の検査基準に適合しているかを事前に確認する必要があります。
また、古い設備を無理に流用した結果、オープン直後に故障して営業に支障が出るリスクを回避するために、劣化状況の見極めも欠かせません。
厨房機器の導入にあたり、中古品を積極的に取り入れることも有効な手段です。
冷蔵庫や製氷機、シンクなどの耐久性が高く見た目への影響が少ない機器は、中古市場を活用することで新品価格の半分以下に抑えられるケースがあります。
中古品を選ぶ際は単に価格だけでなく、保証期間の有無やメンテナンス体制が整っているかを確認することが必須です。
主要な熱源機器などは新品を選び、補完的な機器を中古にするなど、役割に応じた使い分けがリスクヘッジとなります。
飲食店では、内装設計が売上や運営効率にも影響します。
そのため、内装費用を「コスト」としてだけでなく、将来の収益を生むための「基盤」として捉える視点が不可欠です。
店舗のレイアウトは、ビジネスモデルが「客単価重視」か「回転率重視」かによって変わります。
例えば、高単価のレストランであれば、隣の席との間隔を広く取り、プライバシーを確保する造作に投資することで、顧客の滞在価値を高めます。
反対に低単価・高回転のモデルであれば、スタッフのサービステリトリーを最適化し、席数を一席でも多く確保する緻密な設計が求められます。
事業計画上の売上目標から逆算された席数と配置こそが、費用対効果の高い設計と言えます。
優れた内装設計は、スタッフの労働効率を向上させます。
厨房から客席への配膳・下げ膳ルートを最短に設計し、スタッフ同士の交錯を防ぐことで、ピークタイムの稼働効率を高めることができます。
無駄な動きを減らすことは、単にサービスの質を向上させるだけでなく、長期的には人件費の削減やスタッフの離職防止にも貢献します。
初期の工事費が多少上がったとしても、運営後のランニングコストを低減できる設計は、質の高い投資判断となります。
内装費用の総額は、どの業者に依頼するか、どのようなパートナーシップを築けるかによって左右されます。
単なる安さの比較ではなく、提示された金額の根拠と提案の質を見極めることが重要です。
適正な価格で工事を行うための第一歩は、見積書の確認です。
「内装工事一式」といった大まかな表記ではなく、各項目の材料名、単価、数量が詳細に記載されているかを確認しましょう。
内訳が明確であれば、他社との比較検討が容易になるだけでなく、予算調整の際に「どの項目を削ればいくら下がるのか」という議論が建設的に行えるようになります。
優良な内装業者は、予算内で最大限の効果を引き出すための提案力を備えています。
要望をそのまま積み上げて予算をオーバーさせるのではなく、代替案を提示できるかどうかが判断基準となります。
例えば、高価な石材の代わりに同じ質感を持つ安価な建材を提案したり、空間の魅力を損なわずに工期を短縮する手法をアドバイスしたりできる業者は、経営パートナーとして頼もしい存在となります。
飲食店の内装設計における「機能性とデザインの両立」を具体的に示す事例をご紹介します。

コンクリート調の質感に対し、木材やメタルの要素をピンポイントで組み合わせることで、空間にリズムと高級感を持たせています。
ベージュやグレーなどのニュートラルカラーで統一しており、都会的でありながらリラックスできるカフェ&バーとしての機能を見事に体現しています。

開放感あふれる厨房は、常に客席を見渡せる設計になっており、行き届いたサービスを実現しやすくなっています。

主張しすぎない照明器具を選ぶことで、空間のノイズを減らし、内装そのものの造形美を主役にしています。
飲食店の内装費用は、業態や物件条件、そしてオーナー様の理想の形によって千差万別です。
しかし、その根底にある「内装・設備・厨房」というコスト構造と変動要因を正しく理解していれば、不透明な不安を解消し、地に足の着いた予算設計が可能になります。
重要なのは、単に費用を安く抑えることではなく、投じた予算が将来の店舗運営において「利益を生む資産」として機能するかどうかという視点です。
専門知識と確かな提案力を持つパートナーと共に、機能的で、お客様を惹きつける価値ある一軒をつくり上げてください。
弊社では、ブランディングの意図を踏まえたデザイン提案から、設計・施工の一貫対応、さらには引き渡し後のアフターフォローまでトータルで支援しています。
また、ご予算に応じた最適な素材や仕様の選定を行い、投資対効果を意識したコストマネジメントにも対応しています。
法規制や保健所の検査基準、防災設備に関する知識を発揮して、業種ごとの複雑なルールをクリアし、スムーズな開店を支援できる専門性にも強みがあります。
限られたご予算の中でも、投資対効果を意識した最適なプランニングをご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
店舗デザイン・設計施工の株式会社nero
neroは、店舗・オフィス・住宅など多様な空間を対象に、企画設計から施工、ブランディング、販促・Web・SNSまで一貫して手掛ける空間プロデュース会社です。ブランドの世界観を空間に反映し、集客や繁盛店づくりを支援。社名には「信念を持ち社会貢献する」という想いが込められています。
この記事の監修者

中原 優介