2026/10/09
この記事の監修者

中原 優介
飲食店を開業するにあたって物件が決まると、次に向き合うことになるのが「内装デザイン」です。
せっかく自分のお店をつくるなら、料理やサービスだけでなく空間そのものにもこだわりたいと考えるオーナー様は少なくありません。
一方で「おしゃれにしたい」というイメージはあっても、色・素材・照明・家具をどのように組み合わせればよいのか、具体的な進め方に迷うケースは多く見られます。
また、SNSで見かけた内装をそのまま取り入れた結果、自店のコンセプトと噬み合わなくなることも避けたいところです。
本記事では、飲食店の内装をおしゃれにするための6つのポイントをはじめ、業態別のデザインの考え方、居心地を左右するレイアウトと動線、費用の考え方、失敗しやすいポイントまでを、施工事例とあわせてご紹介します。
店舗デザイン・設計施工の株式会社nero
neroは、店舗・オフィス・住宅など多様な空間を対象に、企画設計から施工、ブランディング、販促・Web・SNSまで一貫して手掛ける空間プロデュース会社です。ブランドの世界観を空間に反映し、集客や繁盛店づくりを支援。社名には「信念を持ち社会貢献する」という想いが込められています。
目次
飲食店の内装は、料理を提供するための場所を整えるだけのものではありません。
通りかかった人やSNSで写真を見た人が「このお店に行ってみたい」と感じるきっかけをつくり、来店したお客様に「また来たい」と思ってもらうための、集客とブランディングの土台です。
まずは、内装がお店に与える影響を整理しておきましょう。
飲食店の内装は、お店の第一印象を左右します。
ファサードや窓越しに見える店内の様子は、初めて訪れる人が「入店するかどうか」を判断する材料の一つです。
近年は、お店を探す際にInstagramなどのSNSやグルメサイトの写真を参考にする人が増えています。
来店客が投稿した店内の写真は、第三者の目線で届く情報として拡散され、写真を見た人が「行ってみたい」と思うきっかけになります。
また、素材や色、照明がつくり出す雰囲気は、「気軽に立ち寄れるお店」「特別な日に訪れるお店」といったブランドイメージを言葉を使わずに伝えらます。
料理の味や価格だけでなく、「その空間で過ごす時間」そのものが来店動機になることが、内装にこだわる大きな理由です。
見た目を優先しすぎた内装は、ときに開業後の使い勝手の悪さにつながることがあります。
飲食店は、料理の提供や片付け、会計といった作業が営業中に絶えず発生する場所です。
厨房の機器配置やスタッフの動線が考慮されていなければ、ピークタイムに配膳が滞ったり、スタッフの負担が増えたりします。
お客様にとっても、写真では魅力的に見える空間であっても、座り心地が悪かったり隣の席との距離が近すぎたりすれば、長く過ごしたいとは感じにくくなります。
おしゃれな飲食店をつくるためには、デザイン性と機能性を切り離さずに計画することが重要です。
内装を考える際、気になるお店の写真を集めるなど、ビジュアルから考えるのも一つの方法です。
ただし、次の手順に沿って考えたほうが頭の中を整理でき、色や素材を選ぶときの判断基準も定まりやすくなります。
ここでは、飲食店の内装をおしゃれにするための6つのポイントを順にご紹介します。
デザインを考え始める前に、まずは来店したお客様に「どのようなお店として受け入れられたいか」を明確にしましょう。
たとえば「毎日寄りたくなる自分の居場所のようなお店」「大切な人を連れて行きたくなるお店」「ここで働いてみたいと思わせるお店」などです。
同じカフェでも、どれを選ぶかによってふさわしい空間は大きく変わります。
このステップのもとになるのは、開業を決めたオーナー様自身の想いや考えです。
その想いの独自性が高いほどオリジナリティが生まれ、他店との差別化につながりやすくなります。
そして、具体的なポジショニングが店舗のコンセプトをつくるきっかけとなり、内装だけでなくお店全体のデザインの根幹になります。
次に「誰に・何を提供するお店なのか」を明確にして、店舗コンセプトを固めます。
ターゲットの年代や利用シーン、客単価が定まると、高級・カジュアル・ナチュラルといった空間の方向性も自然と絞り込まれていきます。
またコンセプトが明確であれば、色や素材、家具を選ぶときに「このお店らしいかどうか」という判断基準が生まれます。
反対に、コンセプトが曖昧なまま気に入ったアイテムを取り入れると、空間全体に統一感がなくなります。
流行を取り入れる場合も、コンセプトに合うかどうかを優先して判断することが、店舗らしさを保つポイントです。
空間の印象を大きく左右するのが「色」です。
配色を考える際は、壁や床など広い面積を占めるベースカラー、家具や建具などに使うサブカラー、空間を引き締めるアクセントカラーの3つを先に決めておくと、全体をまとめやすくなります。
使う色が多すぎると統一感が失われ、落ち着きのない印象になります。
また、暖色系は温かみや親しみやすさを、モノトーンは洗練された印象を与えるため、提供する料理やターゲットに合わせて色の印象を選ぶことも大切です。
木は温かみを、石やタイルは上質感を、金属はシャープで無機質な印象をつくるなど、素材によって空間の印象は大きく変わります。
また、柔らかい木目と硬質な金属や左官壁を組み合わせるように、質感の異なる素材を対比させると、空間にメリハリが生まれます。
ただし、種類を増やしすぎると統一感が損なわれるため、ベースとなる素材を絞り込んだうえで組み合わせましょう。
また、すべての場所を高価な素材で仕上げる必要はありません。
入口やカウンター、客席の正面の壁など、お客様の目に入りやすい場所に絞って予算をかけることで、費用を抑えながら空間の質感を高められます。
店舗全体の雰囲気は照明で7割決まるともいわれ、色温度や明るさによってお店の印象は大きく変わります。
飲食店の客席では、温かみがありリラックス効果の高い「2700K〜3000K(電球色)」が標準的に使われています。
ペンダントライトやブラケットライトは、明かりとしての役割に加えてインテリアのアクセントにもなります。
壁や天井に光を反射させる間接照明を組み合わせると、空間に柔らかい陰影が生まれます。
また、客席・カウンター・ショーケースなど場所ごとに照明を使い分けることも重要です。
空間全体を均一に照らすのではなく、料理や商品など見せたい場所に光を集めると、立体感のある空間になります。
関連記事:
飲食店の照明は「居心地」をつくる|集客につながる照明計画とは
お客様の店舗体験は、入店する前から始まっています。
店の前を通る人にコンセプトを伝えるためにも、看板やファサードは内装デザインの一部として考えましょう。
外観と店内の雰囲気がかけ離れていると、入店したお客様が違和感を覚える原因になります。
配色や素材、照明を外観と内装でそろえることで、通行人に「あのお店」として記憶されやすくなります。
さらに、一貫性を持たせるべきなのは内装や外観だけではありません。
スタッフのユニフォーム、ロゴ、メニュー表、食器など、お客様が目にするすべてのタッチポイントが対象です。
こうした一貫性の積み重ねが、「どのようなお店か」というお客様の認識を形づくります。
関連記事:
飲食店の看板は「印象」で決まる!記憶に残り’あの店’と想起されるデザインと配置の法則
同じ飲食店でも、お客様の滞在時間や利用シーン、厨房の規模は業態によって異なります。
そのため、「おしゃれ」の形も業態ごとに変わります。
ここでは代表的な4つの業態について、内装デザインで押さえたいポイントをご紹介します。
カフェや喫茶店は、読書や会話を楽しむお客様が多く、落ち着いて過ごせる照明や色使いが求められます。
木材などの自然素材を取り入れると、温かみのある空間を演出しやすくなるでしょう。
席の配置は、一人客向けのカウンター席とグループ向けのテーブル席を組み合わせ、どちらの利用シーンにも対応できるようにしましょう。
特徴的な壁面は、お客様が写真を撮りたくなるきっかけになるため、設置を検討するのもよいかもしれません。
居酒屋やバーは、照明を抑えて落ち着いた雰囲気をつくることが基本です。
特にバーでは、カウンターが店舗の主役となり、天板の素材や背後の酒棚の見せ方が空間の印象を大きく左右します。
酒棚への間接照明でボトルを浮かび上がらせたり、手元にだけ温かな光を落としたりすると、お酒や料理が映える空間になります。
長時間の滞在を想定し、椅子の座り心地や席の間隔にも配慮が必要です。
レストランは、料理の価格帯に合わせて高級感や上質感を演出することが求められます。
客席間の距離を十分に確保し、隣の席の視線や会話が気にならないプライバシーへの配慮も重要です。
料理を美しく見せるためには、物の色を自然に再現できる高演色の照明(Ra90以上が目安)が有効です。
あわせて、サービススタッフが客席の間をスムーズに動ける動線も確保しておきましょう。
ラーメン店や定食屋は、回転率とスタッフの動線を優先した設計が基本となります。
カウンター席を中心にする場合は天井の高さや照明の配置を工夫し、席が並んでいても圧迫感が出ないようにします。
また、油や煙、においが発生しやすい業態のため、排気設備の計画が欠かせません。
内装材は、油汚れを拭き取りやすく耐久性のある素材を選ぶと、開業後も空間の美しさを保ちやすくなります。
色や素材、照明をどれだけ整えても、席の配置や動線に無理があればお客様は落ち着いて過ごせず、スタッフも働きにくくなります。
ここでは、居心地の良い空間をつくるための3つの観点をご紹介します。
席数は売上に直結するため、できるだけ多く確保したいと考えがちです。
しかし、席を詰め込むと隣の席との距離が近くなり、視線や会話が気になってくつろげない空間になってしまいます。
席を配置する際は、一人客、カップル、ファミリーなど、想定する利用シーンに合わせて席の種類と数を決めましょう。
あわせて、入口やトイレへの移動がしやすい通路幅を確保しておくと、混雑時でもお客様がストレスなく過ごせます。
厨房とホールの位置関係は、料理の提供スピードやスタッフの負担を左右します。
配膳や下げ膳の距離を短くし、厨房の出入口や配膳スペースを客席から動きやすい位置に設けることが重要です。
また、一方通行ではなく店内を巡回できる動線を取り入れると、ピークタイムでもスタッフ同士がぶつかりにくくなり、混雑を防げます。
オープンキッチンのように、調理の様子を見せることでお店の魅力になる場所がある一方、洗い場や食材・備品のストックなど、生活感が出やすい場所もあります。
こうした場所は客席からの視線をさえぎる位置に配置し、十分な収納を確保して客席に物があふれないようにしましょう。
「見せる場所」と「隠す場所」を設計段階で分けておくことが、デザイン性と実用性を両立させるポイントです。
飲食店の内装費用は、坪単価40万円〜80万円程度が標準的なボリュームゾーンです。
ただし、実際の金額は物件の状態や業態、工事の範囲によって大きく変わります。
おしゃれさにかける費用と、営業に欠かせない設備にかける費用をどう配分するか、考え方を整理しておきましょう。
内装や設備が何もないスケルトン物件は、電気・空調・給排水といったインフラを一から整えるため、工事範囲が最も広くなります。
一方、前のテナントの設備が残る居抜き物件では、既存設備をどこまで流用できるかによって初期費用を抑えられる場合があります。
また、同じ坪数でも業態によって費用は大きく異なります。
カフェや軽食は厨房設備が比較的簡易ですが、焼肉店やラーメン店など特殊な排気設備を必要とする業態は、坪単価が上がる傾向にあります。
飲食店の内装費用には、設計・デザイン費、床・壁・天井の内装仕上げ工事、造作工事、電気・給排水工事、空調・換気・排気工事、厨房設備、看板・サイン工事などが含まれます。
たとえば、20坪の店舗を想定した場合、内装工事が全体の25〜30%程度、設備工事が30〜40%程度、厨房設備・機器が20〜30%程度が一つの目安です。
見積もりを受け取ったら、こうした項目がそれぞれ含まれているかを確認しましょう。
坪単価は店舗の広さや業態によって変動するため、それだけで業者を比べることはできません。
厨房設備や空調が別途扱いになっている場合もあるため、複数の業者から見積もりを取り、工事範囲をそろえたうえで総額を比較することが重要です。
そのうえで、デザインにかける費用と設備にかける費用の優先順位を決めておきましょう。
お客様の目に入る「見せ場」に予算を集中させ、バックヤードなどは仕様を抑えるといった配分が、限られた予算で効果を高める方法の一つです。
関連記事:
飲食店の内装費用はいくら?坪単価・内訳・業態別の違いとコスト削減のポイント
内装は一度工事を終えると、開業後に簡単にはやり直せません。
だからこそ、計画段階で陥りやすい失敗のパターンを知っておくことが大切です。
ここでは、おしゃれさを重視したときに起こりやすい代表的な4つの失敗をご紹介します。
SNSで話題の内装をそのまま取り入れると、他店と似た印象になり、お店の個性が出にくくなります。
また、自店のターゲットや業態に合わないデザインになる可能性もあります。
流行は時間とともに移り変わるため、長く営業することを前提に、コンセプトを軸としてデザインを決めましょう。
客席を詰め込みすぎたり、厨房とホールの移動距離が長くなったりすると、スタッフ同士がぶつかりやすくなり提供スピードも落ちます。
こうした使いにくさは、図面だけでは気づきにくく、開業後に初めて分かるケースもあります。
設計段階で、営業中のスタッフの動きを具体的に想定しておくことが大切です。
飲食店では、油や水、においへの対策が欠かせません。
汚れが目立ちやすい素材を多用したり、手の届きにくい場所をつくったりすると、日々の清掃に手間がかかり、開業から数年で空間の印象が大きく損なわれることもあります。
素材を選ぶ際は、見た目だけでなく耐久性やメンテナンス性もあわせて確認しましょう。
写真映えする撮影スポットは、新規客を呼び込むきっかけになります。
しかし、一部の壁だけが目立ち、店内全体の居心地が悪ければ、リピートにはつながりにくくなります。
撮影スポットをつくる場合も、店内全体の統一感のなかで位置づけることが大切です。
「映える」ことと「選ばれ続ける」ことは分けて考える必要があります。
ここまでのポイントを形にするには、デザイン力と飲食店の実務への理解を併せ持つパートナーが欠かせません。
ここでは、依頼先を比較する際に確認しておきたい4つの観点をご紹介します。
まずは、公式サイトなどで飲食店の施工事例を確認し、自分が開業するお店と同じ業態・規模の実績があるかを見ておきましょう。
その際は写真の印象だけでなく、どのような意図で設計されたのか、動線や設備でどのような工夫をしたのかもあわせて確認すると、その会社の考え方が見えてきます。
コンセプトを空間で表現するだけでなく、厨房や設備、動線まで含めて設計できるかどうかが重要です。
また、予算に合わせて素材や仕様を調整し、費用をかける場所と抑える場所を提案できるかも、依頼先を選ぶ際の判断基準となります。
設計と施工を同じ会社が担当すれば、デザインの意図が現場に伝わりやすく、工事中の変更や調整にも迅速に対応できます。
また、窓口が一つになることで、開業日に向けたスケジュールや品質を一元管理しやすくなる点もメリットです。
打ち合わせでは、参考画像や希望するイメージを共有し、予算や開業時期についても具体的に相談しましょう。
そのうえで、要望に対してできること・できないことを明確に説明し、代わりの方法も含めて提案してくれる会社を選ぶと、完成後のイメージのズレを防ぎやすくなります。
株式会社neroが手がけた飲食店の施工事例の中から、デザイン性の高さと現場の機能性を兼ね備えた事例をご紹介します。

Qoomoでは、オープン厨房を包み込むカウンターと、温かみのある照明計画を軸とした開放的な空間を展開しています。

客席には木目や左官壁の落ち着いた質感を取り入れつつ、天井のスケルトン構造とペンダントライトがアクセントとなり、カジュアルでありながら洗練された雰囲気を演出しました。
テーブル間の適切なディスタンスを確保することで、活気と居心地の良さを両立させています。

明鏡志水 大名店では、料理が持つ繊細な美しさを際立たせるため、上質な和テイストと現代的な意匠を融合させた内装を構築しました。
柱やカウンター部分に直線的な間接照明を組み込み、落ち着いた陰影を生み出す配光設計を施しています。

客席と厨房の視線を緩やかに緩衝させつつ、配膳動線を最短化することで、美しい空間体験と高い現場効率を同時に叶えています。

ドトール珈琲店 イオンモール川口前川店では、クラシックな重厚感とモダンな華やかさが調和した空間デザインを提案しました。

空間の中央には印象的なペンダント照明を配し、温かみのある木目調の客席ブースやパーティションで仕切られたレイアウトを配置しています。
買い物客が日常を離れてゆったりと過ごせるプライベート感を提供しながら、大人数の利用からお一人様の利用まで幅広く対応できる機能的な客席構成を実現しました。
飲食店の内装は、第一印象やSNSを通じて新しいお客様を呼び込み、お店のブランドイメージを伝える重要な要素です。
おしゃれな空間をつくるためには、まず「どのようなお店として受け入れられたいか」を明確にし、そこから導いたコンセプトをもとに、色・素材・照明を選んでいくことが大切です。
さらに、看板やユニフォーム、メニュー表まで一貫性を持たせることで、お店らしさがお客様に伝わりやすくなります。
一方で、席の配置や厨房とホールの動線、清掃のしやすさといった営業面の配慮を欠かすと、開業後に使いにくさが生まれます。
「見た目」と「営業しやすさ」を一体で考えることが、お客様に選ばれ続ける飲食店づくりの土台となります。
思い描いてきたお店の構想を、信頼できるパートナーとともに空間として形にしていきましょう。
弊社では、飲食店のコンセプト設計から外観・内装デザイン、設計・施工、ブランディングまでを一貫してサポートしています。
見た目のデザインだけでなく、動線や設備、開業後の運営まで見据えた空間づくりをご提案いたします。
飲食店の新規開業や内装デザインをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
店舗デザイン・設計施工の株式会社nero
neroは、店舗・オフィス・住宅など多様な空間を対象に、企画設計から施工、ブランディング、販促・Web・SNSまで一貫して手掛ける空間プロデュース会社です。ブランドの世界観を空間に反映し、集客や繁盛店づくりを支援。社名には「信念を持ち社会貢献する」という想いが込められています。
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中原 優介